自動運転タクシーとは? 帯広のタクシー会社から見た日本の現状と、実用化までの距離
「自動運転タクシー」という言葉を耳にする機会が増えました。私たちミライズグループは、帯広・十勝でタクシーや介護タクシーを運行しながら、自治体と連携して自動運転バス・タクシーの取り組みを進めています。毎日ハンドルを握る地域の交通事業者として、日本の自動運転は今どこまで来ているのか。私たちの視点から整理してみます。
自動運転の前に知っておきたい、日本のライドシェア制度 ― 主役は地域のタクシー会社
まず押さえておきたいのが、日本と海外では前提となる制度が異なるという点です。日本には現在、国土交通省が定義する「自家用車活用事業(日本版ライドシェア)」があります。
これは、タクシー不足の地域・時期・時間帯に限って、タクシー事業者の管理下で地域の自家用車や一般ドライバーが有償運送を行える制度です。2024年3月に創設されており、現在も制度のアップデートが続いています。[参考1]
日本は安全を重視した制度設計となっているため、海外で一般的な「個人が自家用車で乗客を運ぶ」スタイルはそのまま持ち込めません。ライドシェアもタクシー事業者を主体として設計されているため、自動運転タクシーの実現においても既存事業者が重要な役割を担う構造になっています。この点は、自動運転の話題を追ううえでの重要な前提です。
「すべてを自社で抱えない」― 私たちが協業を前提に考える理由
国はこれまで、地方自治体や交通事業者を巻き込みながら、MaaS(Mobility as a Service)の実証実験を積極的に推進してきました。その象徴的な事例が、フィンランド発の「MaaS Global」です。単一のデータベースで交通の最適化・手段提供・決済までを一元化するモデルでしたが、MaaS Globalの破産は、複数の交通サービスを一つのプラットフォームに統合するだけでなく、それを持続可能なビジネスモデルとして成立させる難しさを示す事例となりました。
一方で現在は、すべてを自社で抱えるのではなく、車両メーカー、AI企業、配車プラットフォーム、交通事業者などが役割を分担する動きも広がっています。
私たちも、自治体をはじめとする関係者と手を携え、地域での運行を担う立場から自動運転に取り組んでいます。
「CASE」の変化スピードは想定以上
自動車業界では「CASE」(Connected / Autonomous / Shared・Service / Electric)という言葉が、業界の変化を示すキーワードとして使われています。このCASEの流れの中で、タクシー業界の構造も変わりつつあります。 そして現場感覚として言えるのは、その変化のスピードが想定以上に速いということです。
近年、自動運転技術の社会実装は急速に進んでいます。国内でも実際に「Uber × Wayve × 日産 × 日の丸交通」という枠組みでの取り組みも動き始めており、それぞれの役割を分担しながら手を組む形が現実のものになってきました。
2026年9月15日には、「Waymo × 日本交通 × GO」が2027年中に東京で国内初となるレベル4完全無人走行による商用タクシー運行を目指す、という内容も公表されました。[参考2]
「自動運転タクシーはいつか実現するもの」ではなく、具体的な時期が見えてきた段階に入っています。
東京では大手事業者による大規模な取り組みが始まっていますが、ドライバー不足や需要の縮小といった課題がより切実なのは地方です。雪道、広い生活圏、少ない乗客数。都市部とは条件が大きく異なる地域だからこそ、地元の交通事業者が担うべき役割があると私たちは考えています。
東京の次は地方へ ― 帯広で私たちが感じている期待
実際、 運転手不足や公共交通の減便、人口減少・高齢化など、地域交通をめぐる課題は都市部に比べ特に深刻化しています。
私たちはグループ会社「あのタクカンパニー」を通じて、雪や雨の中でも走行できる自動運転バスの実現や、AIデマンド乗合タクシーの実証に取り組んでいます。
帯広をはじめとする地方の交通事業者が今どんな状況に置かれ、そこでどんな取り組みが始まっているのか。次回は、北海道・十勝地方を例に、地方交通が直面するリアルな課題を掘り下げていきます。