地方交通の課題とは ― 帯広のタクシー会社が日々向き合う、高齢者と子どもたちの移動
前回は、自動運転タクシーをめぐる日本の現状を整理しました。では、私たちが暮らす帯広・十勝では、地域の移動に何が起きているのでしょうか。少子高齢化や若い世代の都市部への流出が進む地方では、公共交通の担い手と利用者の両方が減り続けています。日々ハンドルを握るなかで私たちが感じている変化をお伝えします。
帯広圏で進む、公共交通の縮小連鎖 ― 地元の交通事業者として感じる変化
帯広圏(帯広市・音更町・芽室町・幕別町)の公共交通は、利用者の減少、運転手不足、収益性の低下などが重なり、減便や運行体制の縮小が進んでいます。その結果、公共交通の維持が難しくなり、住民の移動手段をどう確保するかが深刻な課題となっています。
地元で交通を担う私たちにとっても、乗務員の確保は年々難しくなっています。
高齢者:免許を手放した後の「足」をどう守るか
高齢者が増える中で運転免許の返納が推進されている一方で、自主返納件数は2019年をピークに減少傾向にあります。[参考1]
また、交通事故全体が減少しているものの、高齢運転者による事故が全体に占める割合は長期的に上昇傾向にあります。免許返納後の移動手段をどう確保するかも、大きな課題です。
特に年金で暮らす高齢者にとって、車の購入費や燃料費、維持費は大きな負担です。
また、地域包括ケアシステムの構築が進められ、住み慣れた地域で暮らし続けるための在宅医療・介護や生活支援の重要性が高まっています。その一方で、歩行はできても外出や乗り換えなどに不自由を感じる高齢者にとって、通院や買い物などの日常の移動をどう支えるかが課題になります。
帯広市の調査でも、バスの乗り降りや乗り換えが負担になっている、病院の予約時間に合うバスがない、送迎がないと買い物に行けない、といった声が見られます。[参考2]
こうした方々の移動を支えるのがタクシーですが、帯広地区では2025年12月にタクシー運賃が改定され、普通車の初乗り上限運賃は1.4kmまで760円となりました。[参考3]
乗務員の確保や人件費の上昇など、運行を続けるために必要な改定でしたが、私たちとしても「使いたいときに気軽に使える運賃」をどう守るかは大きなテーマだと考えています。
子どもたち:保護者の送迎に頼らざるを得ない毎日
もう一方の当事者が、子どもたちです。塾や習い事、部活動、通院など、子どもの移動で保護者による送迎が必要になる場面が少なくありません。特に公共交通の選択肢が限られる地域や共働き世帯では、送迎が保護者の時間的・体力的な負担となっています。今後バスの減便が進めば、この負担はさらに増大する可能性があります。
見えてきた、地域の4つの移動ニーズ
こうして整理すると、地方に潜在するニーズが見えてきます。
・玄関先まで迎えに来てくれること
・通院という定期的な移動を、無理のない負担で続けられること
・子どもを安全に、保護者が安心できる形で送り届けられること
・「必要な時に、必要な場所へ行ける」という当たり前が維持されること
これらは、大量輸送を前提とする路線バスだけでは対応が難しい、個別性の高い移動ニーズです。
タクシー会社として私たちにできること
ドア・ツー・ドアで、路線や時刻表に左右されにくく、一人でも利用できる。この特性を持つタクシーは、こうした個別の移動ニーズに対応しやすい交通手段の一つです。 帯広駅から目的地へタクシーで移動するといった利用はもちろん、郊外の一軒一軒への送迎まで、柔軟に対応できるのがタクシーの強みでもあります。
私たちは一般タクシーに加え、介護タクシーも運行し、通院や買い物に向かう高齢のお客様を日々お送りしています。玄関先から目的地まで付き添う移動の大切さは、現場で強く実感していることです。
一方で課題となるのが、運賃と乗務員をどう維持していくかという点です。 そして、この課題に対する一つの可能性として、自動運転という技術があります。 次回は、私たちミライズグループが目指す姿を具体的にお伝えします。